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インフルエンザワクチンについて~ワクチンって効果あるんですか?
2025年も残すところ3ヶ月となりました。毎年寒くなるとインフルエンザの感染者数増加の報道を目にします。昨冬も多くの方が発熱外来を受診されました。
今年も10月15日から65歳以上の方を対象にインフルエンザの定期接種が開始されます。インフルエンザワクチンの有効性については時々外来でも質問を受けます。今回はインフルエンザワクチンの有効性を解説したいと思います。今日はAさん(67歳、男性)に外来でワクチンの相談を受けました。
こんにちは。
京都市からインフルエンザワクチン接種のお知らせが来ました。以前から疑問に思っていたんですが、インフルエンザワクチンって効果あるんですか?
Aさん、こんにちは。
インフルエンザワクチンの効果についてですね。どのような疑問をお持ちですか?
知り合いにワクチン接種したけどインフルエンザにかかったって聞いたんですが…
なるほど。
ワクチンの効果については発症予防と重症化予防の2つに分けて考えた方が良いと思います。また、ご高齢の方か、健常な若い方か、ワクチンを受ける方によっても効果が変わってきます。
私のような65歳以上で持病のある場合はどうなんでしょうか?
様々な研究がありますが、65歳以上の方の場合、インフルエンザワクチンを接種しない場合と比べて、インフルエンザの発症率は約60%低下し、肺炎やインフルエンザによる入院は約50%、死亡は約40%減少すると報告されています。
(参考文献:Vaccines for preventing influenza in the elderly(CD004876))
なるほど…予防効果100%というわけではないけど、入院や死亡のリスクは減らすことができるんですね。
おっしゃる通りです。必ずしも発症を抑制するわけではありませんが、インフルエンザワクチンは副反応が少ないワクチンですので、ご高齢の方や持病のある方に関しては、重症化予防の観点からも接種をお勧めしています。
分かりました。今年も受けてみようと思います!
ご高齢の方に対するインフルエンザワクチンの効果について解説しました。2018年発表の論文を参考に解説していますが、厚生労働省のホームページでは国内の研究が引用されており、65歳以上の高齢者におけるインフルエンザワクチンの効果は「34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止した」と報告されています。
65歳未満の若年者に対するワクチンの効果に関する報告も紹介したいと思います。健常成人を対象とした研究では、ワクチン接種によりインフルエンザの発症は59%低下すると報告されています(参考文献:Vaccines to prevent influenza in healthy adults(CD001269))。一方で重症化による入院の予防効果には差がありませんでした。健常人ではもともと重症化する人の割合が少ないためと考えられます。
健常成人、高齢者共にワクチンによるインフルエンザの予防効果は100%とは言えませんが、一定の効果があると言えます。ご高齢の方では重症化予防の観点からワクチン接種が推奨されます。また、海外ではより効果の高いワクチン(高用量ワクチン)が一般的に使用されており、日本でも来年度以降の導入が期待されています。