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高血圧について①~生活習慣の見直し
みなさん、こんにちは。
大宮あおき内科クリニックの院長の青木です。
クリニックの受診理由として多い症状や疾患について、対話形式の医療コラムで情報提供をしていきたいと思います。皆様の疑問や不安の解消につながれば幸いです。
さて、初回のテーマは高血圧です。健診で血圧が上昇していたため、男性(61歳)Aさんがクリニックを受診されました。
※本コラムに登場する患者さんは、私が日々の診療を通じて得た記憶や印象をもとに再現したものであり、実在の方を特定して描いたものではありません。読者の皆さまに診療現場の雰囲気をお伝えする目的で構成しています。
先日の健康診断で血圧の異常を指摘されました。上が148、下が91です。これまでも高めではあったのですが、初めて受診するように言われたんです。今日、クリニックで測定した血圧も149/92と高かったです。
おっしゃる通り上が140、下が90を超えると高血圧と診断されます。健診会場や病院などいつもと違った環境では血圧が高くなることが多いんですよ。ご自宅で血圧を測定されたことはありますか?
血圧計はあるんですが、最近全く測っていないです。
血圧計をお持ちであれば、まずは家庭血圧を測定してみましょう。自宅では意外に正常という方も多いんですよ。
血圧はその値に応じて、重症度があります。現在の血圧はI度高血圧に該当します。そして、血圧以外の脳血管疾患リスクの有無でリスクを層別化します。健診結果を拝見すると….高脂血症もなくて…喫煙歴もないですから、リスクは第2層と分類されます(リスク分類については下記に解説あり)。残念ながら男性というだけで、リスクになるんですよ。この結果から、Aさんは中等リスクの高血圧ということになり、まずは家庭血圧の測定と生活習慣の是正が推奨されます。
分かりました。自宅で血圧を測ってみます。でも、いつ測ればいいんでしょうか?あと、生活習慣の改善と言っても何に気を付ければよいのか…
家庭血圧は起床後と寝る前の1日2回の測定をお願いします。起床時は血圧が上昇しやすい時間帯です。
生活習慣についてはお話をうかがった上で、どこを変えていくべきか相談していきましょう。まずは尿検査で1日の塩分摂取量を測定し、減塩の必要性について検討しましょう。
高血圧のためクリニックを受診されたAさんと医師の会話を見て頂きました。
当クリニックでは高血圧診療のガイドラインに沿って、生活習慣の見直し、必要であれば内服薬で高血圧の治療を行っています。また、すべての高血圧の方に家庭血圧の測定をお願いしています。
高血圧による脳血管疾患リスクが低リスク、あるいは中等リスクと判断された場合は、生活習慣の是正をお勧めしています。具体的には下記の通りです。
- 減塩(6g/日以下):尿検査で1日の塩分摂取量を推定し、減塩の要否を検討しています。
- 野菜・果物の摂取:カリウムを含む野菜や果物を摂ると腎臓での塩分排泄が促進され、高血圧に良いとされています。
- 減量:体重1kgの減量は血圧1mmHgの低下につながります。
- 有酸素運動:40~60分/日、運動が難しい場合は日常生活強度の増加(歩行距離アップ、階段の使用など)をお勧めしています。
- アルコールの制限:純アルコール換算で1日に男性では20-30ml(ビール500ml、日本酒1合程度)、女性は10-20mlまでが推奨されます。
高血圧は短期的な問題(血圧上昇による脳出血など)を心配されて受診される方が多いですが、長期的にも動脈硬化の進行による脳心血管疾患のリスクを上昇させます。血圧に不安のある方はご相談ください。次回は、Aさんの尿検査と家庭血圧の結果からのその後の治療方針決定について説明いたします。
(参考文献:高血圧管理・治療ガイドライン 2025)